練習の日々

餌で釣る。

郊外のAモールにIステーキが入っており,グーグルマップで自宅からAモールまでの距離を調べると16.4㎞。そこでまず,「自宅からAモールまで歩いて行って,ステーキ1枚食って帰ってくるプラン」というのを考えました。肉で自分を釣ったわけですね。自宅からAモールまでの道のりは,ひたすら1本の県道を歩いていくだけ,かつ鉄道路線に沿っているので,途中で無理になったら最寄りの駅から電車に乗って帰ってこられると思ったのです。

1回目は確かにキツかった。

はじめの何回かは手ぶらで歩きました。真冬(1月)だったので,ダウンジャケットのポケットに財布とスマホくらいを入れて,完全に普段の格好で,ただ単に歩いて行ったのです。1本の県道といっても多少の分岐点はあり,はじめは道が分かりませんから,スマホとにらめっこしながらでした。無事にAモールに到着し,ステーキを堪能。

復路も脚をさすりさすり頑張って歩き,自宅まで30分少々の地点まで戻ってきたところで戦勝祝いとしてパブでビールを飲みました。なんでも,通常の2倍だったか2.5倍だったかの特大生がメニューにあり,思わず挑戦したくなってそれを頼んだのです。ちなみにその特大生はキンキンに冷えていてメチャうまかったし,ビールを飲んだこと自体は悪くもなんともなかったのですが,スツールに腰掛けてビールを飲んで立ち上がったら,脚がガチガチになっていました。そういえば,昔々,部活や登山で「一度休むとかえってつらくなる」という現象があったような・・・・・。とにかく,そこから自宅までの3㎞弱は,脚が痛くてタイヘンでした。家に着いたときは少しグロッキーになってしまい,ベッドに倒れ込んでしばらく動けませんでした。

でもすぐ慣れた。

2回目,3回目となると,別に体のどこかが鍛えられたわけでもないのに,とにかく1回目のようなことはなくなり,普通に往復できるようになりましたので,次に応用編をいろいろ試すことにしました。

いろいろな応用編

・距離を伸ばす。

本番は1日約40㎞と分かっていましたので,距離を往復40㎞に伸ばすことにしました。「自宅からAモールまで歩いて行って,ステーキ1枚食って帰ってくるプラン」を変更し,「自宅から郊外のH駅まで歩いて行って,帰りにAモールに立ち寄ってステーキ1枚食って帰ってくるプラン」としました。これも回数を重ねるうちに慣れてきましたので,しまいに50㎞レベルの距離も試しました。

・荷物で負荷をかける。

はじめは手ぶらだったわけですが,本番は当然荷物を背負います。それもあらかじめシミュレートしておきたかったし,できれば本番以上の負荷で訓練しておきたかったので,デイパックに2Lの水のペットボトルを2本入れて歩き始めました。自分としては,これでもう充分に「スポコン特訓」です。本番は,これよりずっと軽い荷物しか背負う気はありませんでした。

・靴を試す。

はじめは普段履きのウォーキングシューズが一番かとも思ったのですが,距離40㎞+負荷4㎏になると足の指先が痛くなることが分かったので,少し大きめのジョギングシューズに変更しました。少し大きめということで,靴の中で一歩ごとに足がすべると脚が痛くなりはしないかと思いましたが,スポーツ用品店の店員さんが,「足がしっかりグリップされる紐の結び方」をレクチャーしてくれたので解決しました。

・2日連続で歩いてみる。

はじめは週1日でしたが,やがて2日連続も試しました。本番は何日間も続けて歩くわけで,前日の疲れが残っている状態で歩いたらどうなるか?これもやっておきたかったのです。距離40㎞+負荷4㎏+2日連続という感じに,オプションを組み合わせて自分を鍛えていきました。

・雨の日に傘をさして歩いてみる。

本番の13日間の中では,必ず雨の降る日もあるだろうと考え,雨の休日にもむしろ良いシミュレーションと思って歩きました。

さらに発展編

「本番で絶対に折れない心を培う」をスローガンに,足の豆にわざと絆創膏を貼らないで1日歩くセルフ人体実験や,今来た道を無駄に引き返す精神的拷問といった,もはや笑うしかないアホなアイデアも次々と試しました。わざと寝不足な状態で40㎞歩くなんていうのもやりました。しかし,13日間踏破を果たした今になって振り返れば,こうした訓練のひとつひとつが本番に活かされたような気がします。

分かったこと・分からなかったこと

練習の日々を通じて,いろいろな経験知を得ましたが,中でも大きかったのは,足の豆ができる位置を完全に特定したことでした。自分の場合,両足のかかとの内側です。ズバリこの位置に必ず豆ができるので,本番は毎朝この豆ポイントにジャンボサイズの絆創膏を貼ってから出発しました。お蔭で13日間,足(FOOT)が豆で痛むということは1秒たりともなかったのです。

練習に使ったコースは起伏がほとんどありません。よって,峠越えのようなアップ/ダウンのシミュレーションだけは全くできませんでした。この点は本番に向けてやや不安でしたが,結果的にはあまり関係ありませんでした。現在の自分の体力なら,東海道ウォーキング中のちょっとした上り坂程度はたいして苦にならなかったのです。10年後はこうはいかないと思います。

本番ではじめて経験したのが,発汗による疲れでした。練習を積んでいたのがずっと寒い時期(1月~3月)だったので,汗をかいて体力を消耗するということがほとんどなかったのです。東海道ウォーキングにチャレンジする季節によっては,私の13日間より過酷なことも多いと思います。

本番が待ち遠しい。

練習コースは10往復以上したのではないかと思います。さすがに飽きました。ステーキは飽きないんですけどね。一方で,ホテルの予約や情報収集を進め,本番への期待感がふくらんでいきました。「日本橋に立つ日が待ち遠しい」「はじめて歩く町々や街道沿いの風景が楽しみだ」「江戸時代の人たちと同じ道を歩く気分はどんなだろう」と・・・・・。

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